まだ見ぬ音の波に

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ぼくらは大人になれているのだろうか... Karin.『アイデンティティクライシス』感想・レビュー

 

 

Karin.というシンガーがいた

 

シンガーソングライター Karin.の1stフルアルバム

『アイデンティティクライシス』を聴きました。

 

 

Karin.は茨城出身の18歳のシンガーソングライター。

現役高校生とのことですね。

 

わたしが知ったきっかけは、

YOUTUBE上で出会った「青春脱衣所」という曲。

 

youtu.be

 

バース部分のメロディから引き込まれていた中で、そこから迎えたサビにグッときました。

トラックの音の盛り上がりはなしで、歌だけで思いを表現していく。

そして、”青春脱衣所”という表題に繋がっていく。

 

1回目のサビでは、”君は嘘をついたんだ”で終わり、音数が増えて続く2回目のサビでは、”僕は嘘をついたんだ”で終わる。

 

抑えていた思いから、溢れ出す思いへと。

 

音と、歌と歌詞で心情が強く表現されている一曲だなと思いました。

バース部分において、同じ言葉をループさせるのも詩的でとても印象的です。

 

 

最初聴いた時は、誰が歌っているのかもわからなかったのですが、

 

概要欄に目をやると、

茨城出身の高校生で、シンガーソングライターということが分かりました。

 

もともと誰が歌っていようとも、「アルバムを聞こう」と思っていたところに、

現在高校生ということ、そして茨城出身というところが、とても気になりましたね。

 

 

都心から離れたところに暮らす、18歳の女の子から一体どんな言葉が聴けるのだろう。

 

そして、それらが合わさったアルバムはどんな色になるのだろうか。

 

 

ほかの曲は視聴せずに、まっすぐアルバムを聴くことにしました。

 

 

高校生というレッテル

 

高校生のシンガーソングライター。

 

そう聞いてなにを思い浮かべるでしょうか。

 

「人生経験が少ないから書ける内容は限られている」

「恋愛や友情の話ばかりで、若い人しか共感できない」

 

なんて声をわたしは聴くことがあります。

 

 

そして、もし作られたアルバムや曲が、

 

大人顔負けのものだったら評価がされ、

高校生が作りそうな音楽だったらプラマイゼロになる。

 

 

その一方で、

わたしは別の角度から考え、このアルバムに臨みました。

 

音楽というのは、時になにかと比べることも必要だとは思いますが、

初めから相対評価をしてしまっては、音楽を心の底から楽しむということはできないのではないかと思っています。

 

だれと比べることもなく、ひとつひとつの音楽を聴き、

そのアルバムの良さに触れる。

 

 

なので、

今回、茨城出身と高校生というワードに興味を持ったことは事実ですが、

 

高校生だから、〇〇だよなあ。高校生なのに、〇〇だよなあ。

といった視点ではアルバムを見なかったということを、あらかじめお伝えしておきます。

 

 

予想できなかったアルバムの始まり

 

一曲目は、「愛を叫んでみた」という曲から始まります。

 

こちらの曲はひとことで表せば”青春ロック”のようなテイストでしょうか。

流れていくような音のドラムとギターに、熱量たっぷりのKarin.の歌声が加わる。

 

わたしは「青春脱衣所」のイメージから、アルバムの内容はどうなるのだろうと考えていたのですが、

 

まったく想像していなかった曲からの始まり。

 

いやあ。もうね。

驚きを通り過ぎて唖然しつつ、

 

しだいに笑みに変わり、高揚感に包まれる。

 

そんな一曲です。「愛を叫んでみた」。

 

 

youtu.be

 

印象に残ったのは、ギターとドラムと歌声だけではなかったんですよね。

 

叫ばれた愛とは、なんなのか。

 

歌詞もとても印象的だったので、少し触れていきたいと思います。

 

 

出だしの歌詞がこちらです。

 

歌いたくない夜に全てを捨てて泣いたの

 

結局誰の事も信じられなかったんだ

好かれる為だけに何でもした良い子に化けていたの

 

それでも歌うのは辞められなくて

私また口ずさんでる

スポットライトに当たって

眩しいなあって思ったんだ

 

Karin.「愛を叫んでみた」

作詞:Karin.

 

もうどうなってもいいやと、すべてを捨てたはずなのに。

気づけば口ずさんでる。

 

そして、ステージで照らされたライトの下で、

なにかを感じながら”眩しいなあ”と思う。

 

思い出したくもない 部屋で手首を切った

誰も傷ついて欲しくない

私みたいになって欲しくないよ

 

Karin.「愛を叫んでみた」

作詞:Karin.

 

はっとするような歌詞が曲の中で出てきます。

 

”誰も傷ついて欲しくない

私みたいになって欲しくないよ”

というところからは、音楽で何かを伝えたい思いを感じます。

 

「愛してる」なんて胡散臭いな1人にしてくれよ

なんて嘘だよ 側にいてよ

スポットライトに当たって

存在が確かになる

 

Karin.「愛を叫んでみた」

作詞:Karin.

 

歌だった。

自分という存在を一番感じれるところは。

 

というよりかは、歌があったからこそ。

今ここに立っているし、また歩き出している。

 

 

そして、もう一つの意味をここから感じます。

 

先ほどの歌詞

”誰も傷ついて欲しくない

私みたいになって欲しくないよ”から繋がって

 

自分の存在で、誰かの存在を確かに出来る。

 

誰かを照らすために、愛を叫ぶ。

 

この曲からは、今を生きるKarin.から、

今を生きようとする人たちへの強いメッセージと、

Karin.自身のこれからの音楽活動に対する決意を感じました。

 

 

ぼくらは大人になれているのだろうか

 

印象的な曲「愛を叫んでみた」に続き、

2曲目は、「teenage」という曲に繋がります。

 

世間的には、子どもの年齢にあたる高校生のKarin.が、

”大人になる”ことについて考えを巡らせている歌。

 

この曲で特に引っかかったところが、こちら。

 

子供扱いしないでよねって

いつも大人に言うんだけど

そんなこと言ってる私はいつまでも子供だよね

大人になったら前を向いて行けるのかな

悪口言われても気にしないのかな

いつでも好きなことができるのかな

私の中の理想が出来上がる

 

Karin.「teenage」

作詞:Karin.

 

この部分を聴いていると、

とある疑問が生まれてきました。

  

「大人ってなんだろう⁇」って。

 

子供の時は大人を想像する。

あーなってこーなってこーなるんだろうなあ。と。

 

子供の時って、自分があきらかに大人と違うところがわかるんですよね。

 

明らかにできないことがあるし、わからないこともたくさんある。

 

だからたくさん想像をして、

理想の大人像。ではなくとも、なんとなく大人の像ってあった。

 

でも、

実際自分自身が年齢を重ねて、

世間一般的な大人の境界線である二十歳(はたち)を超えたあと、

 

いざ大人ってなんだろうって考えた時にわからなくなる。

 

大人と子供の境目ってどこなんだろうって。

 

 

ここで、Karin.の歌詞に戻ってみます。

 

”大人になったら前を向いて行けるのかな

悪口言われても気にしないのかな”

 

この部分から受ける印象というのは、

大人になったら強くなっているという想像が込められているように思います。

 

 

実際大人になって強くなったのか。

  

強くなることを大雑把に考えてみると、

 

なにされてもへこまないし、気にならないし、

気にも留めないし、泣きもしないし、

だから気持ちの切り替えとかもいらないし、前に進み続けられるし。

 

というのが、ここで想像されている”強くなった大人”と仮定することとします。

 

 

考えました。

 

大人は強いのか。

 

 

わたしは思ったことが一つあります。

 

歳を重ねるごとに、涙する回数は増えたかなあと。

 

あくまでもわたしの場合は、なんですけれど。

 

 

子供の時は言われます。

 

弱虫泣き虫意気地なし。

 

泣く奴は弱いんですよ。

 

泣く奴は弱いし、ダサいし、かっこ悪い。

 

そんな声は、

おそらく家だろうと幼稚園だろうと学校だろうと、常に飛び交う。

 

 

ただ、今大人という枠に存在するひとりの人として考えた時に、

 

泣く奴は果たしてほんとうに弱いのかということ。

 

 

泣く理由ってさまざまだと思います。

 

悔しくて泣く、ただ辛くて泣く、嫌になって泣く、

寂しくて泣く、悲しくて泣く。

 

 

大人も泣く。

 

大人も泣きますよね。

  

多いのか少ないのかは人それぞれだと思いますが。

 

 

ただ、泣いたあとにどうするか。

 

そこにフォーカスすると、

もしかすると、大人と子供の違いがわかるのかなあと思いました。

 

 

 

悔しくて、辛くて、嫌になって泣いて。

でももう一度頑張ろうと立ち上がる。

 

泣く奴は弱い奴かもしれないけれど、

泣いてもう一回挑戦する奴は、強くなろうとしている奴だ。

 

大人になろうとしている人。

 

 

悲しいから泣く。寂しいから泣く。

これが自分事ではなく、他人事から来るものだとしたら、

 

相手の気持ちがわかるから泣く。

 

強くなろうとして痛みを知っているから、他人の気持ちがわかる。

 

大人に近づいている人。

 

 

だから、泣く奴は弱い奴かもしれないけれど、

実は大人になっている奴かもしれない。

 

そんなふうにわたしは思いました。

 

 

ぼくらは大人になれているだろうか。

 

一見わかりそうであるのに、答えが出ない問い。

 

曲を聴きながら、とても考えさせられた一曲でした。 

 

 

最後は、アルバムの魅力について述べていきたいと思います。

 

『アイデンティティクライシス』の3つの魅力

とにかくこのアルバムは濃いんだ

 

とにかく思うことがあります。

 

このアルバムは濃ゆいです。

 

1曲目から、熱量のすごいロックを聞かされ、

 

2曲目で考えさせられる”大人とはなんだろう”という問いを感じる曲。

 

そのあとの3曲は、心の叫びといいますか、言いたかったことを吐いている曲を含めた流れとなっているので、

5曲目までは、様々なKarin.の顔を見ることが出来ます。

 

そして、

最後の3曲は、ラストの「青春脱衣所」に繋がる流れなので、ゆったりした曲が集められている印象ですね。この最後の流れは個人的に好みです。

 

まとめると、

前半の5曲では、曲の雰囲気も、テイストも違う様々な色合いを感じつつ、

後半は、変わる雰囲気の中で、最後の曲に向かって歩き出す流れを味わう。

 

なので、とにかく濃ゆい。

 

その一言に尽きます。

 

 

今しか吐けない”THE 今”な歌詞

 

さきほど述べた「愛を叫んでみた」のように、

それぞれの曲で、”今”という瞬間を感じる歌詞があります。

 

ここでは、「エンドロール」という歌詞に触れていきます。

 

まず1バース目が、こちら。

 

嘘だとわかった瞬間

心が締め付けられたの

今までの愛の言葉

いまいち覚えていないんだよな

貴方が眠るまで起きてたし

好きなものだって合わせた

それでも貴方は離れて行くんだ

 

Karin.「エンドロール」

作詞:Karin.

 

”貴方が眠るまで起きてたし

好きなものだって合わせた”

 

淡い恋心をとても感じた1バース目なのですが、

続く2バース目では、

 

貴方の匂いが染み着いて

きもいくらい離れなくなった

うざったいな貴方は

しつこいんだよ

よくない噂も聞いたし

それでも近づいたんだ

依存してたの?

 

Karin.「エンドロール」

作詞:Karin.

 

”それでも貴方は離れて行くんだ”

という1バース目の歌詞から一転して、吐き出された言葉で、

感情がとても表れている部分です。

 

そして、

どちらの歌詞も、サビに繋がっていきます。

 

別にいいさ 独りで呟いた

ただそれだけの午前1時

「死にたいなあ」

ふと瞬間に思った

 

Karin.「エンドロール」

作詞:Karin.

 

1バース目と2バース目から感じたのは、天と地ぐらい差がある感情の起伏。

そして、それらがたどり着いた先から出た言葉は、胸を締め付けられる思い。

 

 

高校生だから〇〇だ。という話ではなく、

 

このような”今”をとても感じる歌詞は、高校生だからこそ書けるものだとわたしは思います。

それが、『アイデンティティクライシス』の2つ目の魅力です。

 

 

アルバムの彩りを持ち寄ったのは

 

最初思いました。

 

このアルバムの濃さ。

 

誰がトラックを提供しているのかなあって。

 

 

そして調べていた中で分かったのが、

アルバムのすべての曲をKarin.が作詞作曲しているとのこと。

 

いやあ。とにかくびっくりしましたね。

 

音からすでに始まっていた世界観なんだなあと。

 

なので、次回のアルバムがより楽しみになりましたね。

もしかすると、トラックの提供を受ける可能性もありますが、

音から感じるKarin.の世界をまた見たいなあと、とても思います。

 

3つ目は、自己プロデュース。

このアルバムの魅力でもありますし、次のアルバムが楽しみになる魅力という意味も含まれています。

 

 

おわりに

 

以上で、 Karin.の1stアルバム『アイデンティティクライシス』の、

アルバムレビューおよび感想を終えたいと思います。

 

それでは(^^)/